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前者はNの情報操作に輪をかけ、後者はNの株価操作N証券との「しがらみ」と無縁な私にたいしては、取材を拒否するというのが正直なところだった。
「オーバー・プレゼンスじゃないか」という「批判」も、海外でのN証券のやりたい放題にたいする、海外での「批判」だった。 私はいった。
「N証券は新聞社や担当記者に公募株を配っていますが、私にはそんな「しがらみ」もありませんのなんですよ」に輪をかける。 K次長は最終的にいった。
「私も一○年以上、広報の仕事をやっていますが、なにしろ、こういうのははじめてのケースですから、私もどうしたらいいのかわかりません。 担当取締役に相談してみます」驚いたことに、企業のヒモがつかないフリーの取材を受けた経験は、一度もなかったのだ。
ジャーナリストの側からいうと、このN証券の徒にアタックした者は、だれもいなかったという信じられないことになる。 私の取材を受け入れるかどうかも、広報室の権限の外にあって、重役決済事項となった。
広報担当重役がアメリカに出張中で、重役決済も一週間、待たされた。 あらためて広報室を訪ねると、今度はマスコミ関係者の出入りが多いロビーではなく、応接用の個室に通された。
K次長はいった。 「たびたびおいでいただいて申し訳ございません。

広報担当取締役とも話したのですが、いま新聞とか雑誌とか単行本とかがたいへん多くて、オーバー・プレゼンス〔目立ちすぎ〕じゃないかという反省やら批判が社内にありましてね。 出版社からの紹介とかいろんな方が、いろんな『しがらみ』などがありまして〔受け入れざるをえないものもある〕。
だからお断わり申し上げた方がいいんじゃないかと、こういう結論私がN証券から事実上の取材拒否を受けた顛末は以上のとおりだが、一方、N証券はマスコミへの情報提供サービスに余念がない。 そこでは企業利益に合致した情報にかぎって、企業間取引が成立していだが、マスコミ対策や総会屋対策のために、密かに公募株を配っていた。
関係の新聞社と担当記者には、その役割の程度によってランクがあり、そのランクに応じた公募株が配られている。 公募株の利得を餌に使うのは、N証券の常套手段だった。
この事実は、その筋の関係者から直接、聞いたものだった。 だが、その関係者も、「総会屋のことを書くと、連中は暴力団と同じだから、やられるよ」と忠告した。
で、N証券とはかかわりなく、N証券を好き勝手に取材させてもらいますよ」K次長は、私が口にした公募株の件を「いやいや」と否定した。 私も、「そんなことも調べられなければ、フリーでは食っていけませんよ」と、捨てゼリフを残した。
前述したように、N証券は、クレームをつけた顧客などに「そのうちに公募株を回しますから」などといってだまし、表沙汰にしないよう口封じさせた。 N証券は、八四年一○月に全国の地方新聞社と通信社五二社から金融担当記者を集め、「ブロック・地方紙特別金融セミナー」なるものも開催した。
「社友」(八四年一二月号)は、「今、注目される、広報の重要性」というタイトルでそれを報じ、先取りを自慢している。 〈一企業がマスコミ関係者を対象にして、この種のセミナーを開催したことは、金融・産業界の中でも珍しく、こういった規模では恐らく初の試みであろう〉その前文は、〈私たちの大切な資産や資金運用の動向も国際化しつつあります。
その最前線で活躍する証券金融のプロフェッショナルたちIその実像を追ってN証券を訪れてみました〉となっていた。 「自由新報」記者のルポの形式をとって書いているが、実際はN証券広報室に「おまかせ」といったところだろう。
このルポは、〈時代の主役は「モノ」から「マネー」へ〉移りつつあるというわけで、本社トレーディング室を中心に、〈「眠らない男たち」の活躍が展開される〉さまを描いている。 そして、〈「眠らない男たち」の闘いを支えているのは、「C&N」(コンピュータ。
アンド・ネットワーク)と呼ばれる最先端の情報処社内誌の誌上のことであり、マスコミへの情報提供サービスがなんであるか、比較的に本音を語っている。 それは、あくまでN証券が顧客や預り資産をふやす業務と同軸である。

NN総研社長が否定していたはずの〈営利追求を至上命令〉としており、そこには、〈社会的責任を十分に果たしていきたい〉という彼のうたい文句は微塵も感じられない。 これは、N総研が流すさまざまの情報も同様である。
マスコミの側からいえば、広報の情報提供サービスの枠内で取材しているかぎり、広報の業務の下請けをつとめ、宣伝係をやらされるということになる。 私が見たもののなかで、この下請け宣伝係の最高の見は、自民党機関紙「自由新報」のカラー別刷りニページ特集「国際化する証券市場」(八七年九月一五日〈従来にもまして「広報の重要性」が認識されている現在、こうした形で、マスコミ関係者と接触を深ことは、ますます重要なものとなっている。
当社の業務の方向を、新聞記者の皆さんに正しく知っただくことは、一人でも多くの投資家の皆さんがNファンになっていただくことと、両輪の関係めることは、ます全ていただくことは、にあるといえよう。 自治省の八六年政治資金収支報告書によると、N証券の自民党への献金は三三二○万円で、証券各社の〈最前線〉だった。
そして、この特集そのものがN証券の「お買い上げ」のようなもので、〈最先端の情報処理技術〉に「おまかせ」したものだった。 このルポの背景には、当然、自民党とその政府が、〈主役〉をつとめて推進してきた政治がある。
N証券などの金融大企業が〈地球経済〉の〈主役〉となれるように、「金融の自由化、国際化」を推進してきたのは、自民党政府だった。 また、N証券は、その政府の政策をなにかにつけて先取りし、マネーをところで、N証券などの主要な証券会社が加盟している日本証券業協会をはじめ、日本証券取引所協議会などの証券五団体は、社団法人の証券広報センターを設立している。

同センターは、一般にも情報提供のサービスをしている。 そこには上場企業の有価証券報告書や業界紙誌などが備えられ、光ディスクにおさめた各紙誌の報道のコピー・サービスもおこなっている。
試みにN証券に関する最近二年間の報道のすべてを、コピーにとった。 だが、たとえば、さきの『A新聞』の「N証券、無断売買で敗訴」という記事は、なぜか除外されていた。
たまたま一旦、報道された情報も、ここでは握りつぶされていた。 日本では、その取材を受け入れるかどうか、つまりは、その情報を公開するかどうかについて、企業側が選択の権限を一方的に行使している。
そのことによって、証券界にかぎらず、大企業による事実上の報道管制がまかりとおっている。 また、マスコミ企業の多くが、それを無批判に受け入れ、結果としてこの報道管制に組み込まれている。
こうして、日本は他の先進諸国では見られない異常事態となっている。 私も『雰使戦争11日本式経営と世界自動車産』の取材で、アメリカ現地でZ・モータース社やF社などを訪ねたが、要請した担当重役が会ってくれた。
重役たちは、経営方針ともちがった自分の意見を堂々と述べた。


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